「四月は君の嘘」 2巻 美しい嘘で終わって欲しいという願望

この記事は

「四月は君の嘘」第2巻の感想記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

公生とかをり、正反対の道

本誌でも毎月読んでいるのですが、こうコミックスでまとめて読むとまた違ってきます。
印象的だったのが、主人公コンビの展望が明暗くっきりと分かれてしまったこと。

まずは公生。
5話冒頭で椿が「春が始まる」と言っていたり、6話最後のモノローグにて「僕は旅に出る」と自ら考えているように彼は暗く淀んだ光の差さない深海から、ようやく海上に出てきた雰囲気であり、今後の展望にも光が見えます。

逆にかをりは、突如の入院。
1巻で伏線が張られていましたが、どうも相当深刻な病状だと言うことが2巻だけで読み取れます。
倒れたのは一度や二度では無いだろうこともそうですが、人の目に・記憶に自分を刻みつけようとしているかのような言動が目立ち、少なくともかをり自身は余命を懸命に過ごそうとしているかのようです。

7話なんて本誌で読んでいるときは、相当なショックを受けましたもの。
ハッピーエンドで終わると信じて疑わなかったのに、唐突に死をちらつかせられれば、そりゃ気分が滅入るというものです。
そこで今回は、前向きに前向きにこの作品を解釈してみようと思います。

かをりちゃんは死なないと思う2つの理由

というわけで、どうにかこうにか理由を捏ね繰りだしてみました。
ズバリ、公生の為。

これまでを見ても分かるように、彼は母の死に相当なショックを受けてしまったようです。
忘れられるはずの無いピアノを捨ててしまうほどの衝撃を味わった彼は、しかしかをりによって救われていっています。

面白かったのが2巻のクライマックスシーンと呼んでも差し支えないであろう、コンクールのシーンです。

かをりの伴奏者として舞台に上がった公生は序盤こそ無難に演奏出来ていたものの、母の影がちらついてからは、みるみるとリズムを乱しついには伴奏を止めてしまいました。
「暗い海の底で一人ぼっちになる」という表現で、公生の心理状態が描かれていました。

それをかをりが救うのですが…ここでかをりのデザインの秀逸さに驚きました。
漫画って基本的に白黒のモノクロな世界ですよね。トーンを使って他の”色”を演出していますが、基本は2色だけ。
黄色などの色も白で表現される。
だから光の表現となると、どうしても白で表現されることになる。

黒の世界に閉じ込められた公生を救うには、白の輝きが必須。
というわけで、かをりちゃんは白を基調にデザインされているんですよね。
髪も白で、この時の衣装も白。
かをりちゃん自身が光かのような演出がされているようで、非常に引き込まれるシーンでありました。
この作品は、何より黒と白の使い方が凄く上手い!

閑話休題。
いわば現在の公生にとってかをりは星のような存在なんですよね。
光の道しるべ的な。
そんな彼女が死んでしまったらどうなるか。
また、公生は暗い海の底に沈んでしまうでしょう。
掛け替えのない人物を2度も亡くしてしまったら、今度こそ立ち直れないのではないかと思うのです。
もちろんそうならないように公生の精神的な成長を描かれるという事も考えられますが、この作品はあくまでも恋愛ものなのでそれは無いかなと。
恋愛もののテーマは、登場人物の成長よりもやはり恋愛そのものでしょうから。
これが苦しいですが、かをりちゃんが死なないと思う理由です。

四月は君の嘘

どういう意味なんでしょうね。このタイトル。
6話までで作中内に於ける「四月」が終わりを迎えました。
しきりにこの「四月が終わる」ということを描いていたため、この6話までのお話がとても重要になってくるのではと読んでおります。

とはいえ、正直何が嘘なのかさっぱり分かりません。
「四月は」「嘘」と言われても、全く分からないのです。
多分色々と嘘があるのでしょうね。ひとつ、ふたつではないかもしれない。

そのうちの一つが、今回のかをりの演奏なのかなと思いました。

第8話にて、かをりちゃんが印象的な台詞を残しています。
「そんな演奏家たくさんいるよ絶対 「やってられるか」「お前が弾け」って!! それでもまた拾いあげて楽譜に向かう そうやってもっとも美しい嘘が生まれる

連載時は意味の分からなかった台詞でした。
で、調べてみるとフランスの作曲家クロード・ドビュッシーの名言を借りたものなのだと分かりました。
芸術とは、最も美しい嘘のことである。

彼女の演奏は、非常に美しいものでした。
前述の白で描かれた肢体が黒を基調とした背景に映えていて、音の無い漫画の演奏シーンにもかかわらず迫力が伝わってきて。
これも一つの嘘なのでしょうね。

「四月のコンクールでの演奏は君のもっとも美しい嘘」

嘘にも色々ありますよね。人を傷つける嘘。人を心配させない嘘。
そんな中、美しい嘘もあるのだと2巻では描かれていたように思います。
最終的に公生が味わう嘘が辛らつな傷つくものではなく、今回のような美しい嘘であって欲しいと思わずにはいられません。
悲しい嘘は似合わないですよ、この作品には。

四月は君の嘘(2) (講談社コミックス月刊マガジン)

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