「SOUL CATCHER(S)」の移籍は悲観する事では無いとする推論

はじめに

意外な漫画が移籍という形で本誌連載を終えました。
正直作風が合わずに最初の10話位で読まなくなっていたんです。
他人の感情が”見えてる”状態で、人間ドラマ・青春群像劇を描くという骨子がどうも受け入れられなかったのですが、世間的には何となく好調そうに見えてました。
本屋さんでのプッシュされてる事も多く目にしてましたから。
それについ2号前かな。
Cカラー貰っていたばかりでしたので、まさか…と。
(巻頭カラー直後に打ち切り喰らった「P2!」という前例があるので、Cカラー位では別に驚くべき事では無いかもですが)

「SOUL CATCHER(S)」の移籍について少しだけ。

漫画の掲載誌移籍のメリットとデメリット

漫画の掲載誌移籍というのは、殊更珍しい事では無いです。
昔に比べれば、今は少なくなっているのかもしれませんけれど、それこそ”祖”である手塚先生からして漫画の移籍は経験されていて。

ただ、その理由は様々。
ポジティブな理由もあれば、ネガティブな事もある。
この理由については後述しまして、移籍によって齎されるメリットを考えてみます。

例として、人気作が何らかの理由…ここで言う理由とは元掲載誌の休刊・廃刊や作者の都合etc、作品の人気とは関係の無い理由…で移籍する事になった場合を考えます。

すると、真っ先に思い付くメリットと言えば「移籍先雑誌の活性化」でしょうか。
その作品のファンの流入が想定され、(今のご時世中々に難しいですが)部数増が期待されます。
元雑誌にしても(存続してる場合は)、部数減は然程気にしなくても済む事が殆どではないかと。
「ONE PIECE」とかガチで部数を左右しかねないレベルの人気作ならばいざ知らず、そうでなければ、1つの作品が減ったからと言って、その雑誌自体から離れる読者というのは微々たるものではないかと。
もし、そういった読者でも移籍先の雑誌に付いてくれる可能性もあり、同一出版社内での移籍であればプラマイゼロと計算できそうです。

人気作品の移籍は、メリットの方が大きいのかなと。
逆にデメリットについては、移籍理由にも大きく関わってくる事かなと考えます。

例えば、元の出版社(あるいは編集部)と揉めたとなると、ややその漫画(作者)にとってイメージ的なマイナスが付く事もあります。
誰が見ても作者に理があれば別ですが、こういう問題は往々にして「一方の主張が100%正しい」とはなりませんから。
痛み分けという感じで、人気作を失った出版社にとってもマイナスになるし、漫画(作者)にとってもマイナスになりかねない。

世の中には「作者を見る」読者も居ますからね。
作品である漫画とそれを執筆している作者を切り離す事はせずに、作者への共感度や好感度を作品に転嫁している人は少なからず居て、そういう人々は作者に問題性を見出すと、その著作物から離れてしまう事もあるようです。
これは移籍のデメリットと呼べるんではないでしょうか。

さて、移籍についてもっと根本的な理由について書いておきたいんです。
ここまでは人気作…換言すれば「打ち切られた訳では無い」ケースについて触れましたけれど、打ち切られたケース、若しくは打ち切りと同様の意味合いを持ったケースの場合について触れていきます。

打ち切りと移籍の差

本誌から本誌への移籍は人気作に多い気がします。
そうではなく、本誌から増刊号へ移籍させられる漫画の多くは「本誌で人気が取れなかったから」だと思うんです。
打ち切り漫画とほぼ同じ意味合いかなと。
では、何故そのまま打ち切りにならないのでしょう?
通常の打ち切り漫画と何が違うんでしょうね。

あくまで。
あくまでも僕の勝手な想像。
しかも「ジャンプ」等アンケート重視の雑誌についてなんですが…。

「コミックスの売上は「通常の打ち切り漫画」よりも良い。
けれど、アンケート結果が伸び悩んでいた。」
こういう作品が移籍という形でチャンスが与えられてるんじゃないかな?という説を論じてみます。

そこで、ちょっと「SOUL CATCHER(S)」のコミックス推定売上部数(オリコン調べ)を調べてみました。
「SOUL CATCHER(S)」が打ち切り同様の移籍なのかは分かりませんけれど、本誌から増刊への移籍という事で取り上げさせてもらいます。
初動で大体5万部弱。
その週のトップ10に食い込んでいるのを見るに、打ち切られるとは思えない売上な気がします。

では、アンケートはどうか。
こればっかりは外部からは分かりようも無いですが、掲載順から判断するに決して良くは無かった事が窺えます。

一定のファンが付いている事を編集部は掴んでおり、しかし、本誌での人気が芳しくない。
打ち切るのは勿体ないので、移籍させてみようという判断。
こういう流れなら分からないのではないんですが、これはファンにとっては良い事なんでしょうか?

ファンにとっての良し悪し

少し「ファン」の定義について考えを述べておきます。

ファンというと、有り体に言えば「作品の利益に貢献してるかどうか」が大きな基準だとは考えています。
まあ、そうですよね。
「面白い作品を提供して下さったお礼として、対価を作者に返す」
コミックス(新品に限る)の購入であったり。
アンケートに票を入れたり。
ファンレターを出したり。
SNSでポジティブな感想を発信するというのも「布教」という側面に於いては利益の貢献と見做せるかもですね。
他にもあるかもですが、これらのどれか1つ以上の行動を取っている人を「ファン」と定義付け出来るのかなと。

そうは思うんですが、形としてアピールしてない潜在的なファンというのも認めたいんです。
まあ、僕がそうなんですけれど。
今僕は「週刊少年ジャンプ」、「月刊ジャンプSQ.」、「月刊少年マガジン」を購読しています。
これら3誌の中で
「コミックスを買ってない」・「アンケも出してない」・「ファンレター書いた事すら無い」・「ネットで発信もした事無い」
けれど、毎回楽しんで読んでいる作品というのは存在しています。

雑誌での連載を楽しんでいるだけの読者は、その漫画のファンとは呼べないんだろうか…と。
作者の利益に貢献してないからファンでは無いのか?
確かに、貢献しているファンから見ると、ファンとは言えないかもしれません。
「買っている雑誌に載っているから」という理由も否定しませんけれども、それでも好きで読んでいる事には変わりない。
こういうのもファンであると呼ばせてほしいなと思う訳です。

ここでは、このような層もファンであると定義させて頂くと…。
では、こういったファン層がその作品が移籍にあうとどうなるか…。

当然続きが気になって追うファンも居るでしょうね。
でも、僕がそうなんですが、結局追わずにすませちゃう人も居るんじゃないかな。
こういう「貢献はしてないけれどファンでした」というファンにとっては、移籍そのものが悪い事でしょう。

そうではないファン。
「コミックスを買っているファン」にとっては、今回の移籍は喜ばしい事なんじゃないでしょうかね。

上の僕の推測が正しいと仮定します。
コミックスの売上良好、しかし、アンケート結果が芳しくない。

この状態で、例えば、連載続行の判断がされたとします。
「アンケート至上主義」の「ジャンプ」に於いて、これは良策にはなり難いかなと。
アンケートが回復する可能性よりも、そのまま見込みがないと判断されて近いうちに打ち切られてしまう可能性の方が高そうだからです。
だって、そういう「瀬戸際」に立たされると、よくて猶予は数か月でしょうから。

アニメ化が決まったとか、有名な漫画賞を受賞したとか、影響力のある芸能人が宣伝してくれたとか…。
そういう外部の要因が無い限り、数カ月という短期間にアンケート結果が劇的に良化する事は少ないんではないかなと思うんですね。

アンケで結果を出しづらいなら、コミックスはどうか。
ストーリー漫画のコミックスは早くて2カ月に1冊という刊行ペース。
猶予が3か月と仮定したら、最大でも2巻しか出せません。
やはり、唐突に売り上げが「アンケート結果が関係無いレベルまで上昇する」可能性に懸けるのは少々分が悪い。

ならば、いっそ移籍の方が都合が良いんじゃないかなと。
とはいっても、移籍って難しいです。

物語途中からの連載なので、移籍先の読者にとっては、それだけでハードルが上がりますし。
増刊号のように本誌よりも部数が少ないと、それはそれで不利な条件となるし。
上に書いた「利益に貢献してなかったファン」が「貢献するファン」になる可能性も多少なり奪っている。
移籍連載はなかなか難しそうなのが実情で、だからなのか、「SQ.」から「SQ19」へ移籍した作品の多くは短命で終わってしまっています。
総合的に見ると、ファンにしたら移籍は歓迎すべき事では無いのかもしれません。

けれど『「週刊少年ジャンプ」の増刊号への移籍連載』の場合は、然程悲観することでは無いんじゃないかな…。

「ジャンプ増刊号」のコンセプトとアンケートの関係

「ジャンプ増刊号」のコンセプトって「新人発掘の場」なんです。
だから、多くの新人の読切が掲載されています。
それだけだと中々買ってもらえないので、本誌連載経験者の読切や本誌連載作の番外編を多数掲載している…と僕は考えています。

本誌と違ってアンケートの意味合いが違うんでしょうね。多分。
本誌では「連載続行の有無」が委ねられ、増刊号では「本誌での連載有無」若しくは「次の掲載機会の有無」が判断される。
全”掲載”作品にとって大事な本誌と違って、増刊号のアンケートは”読切”作品にしか影響がないのではないか…。
戦ってるステージが違うから、本誌連載作の番外編がアンケート上位に来ても、正直意味が無い。
完全な憶測ですけれどね。

なんとなくですけれど、連載作品もアンケート度外視な気がするんですよ。
少なくとも「週刊少年ジャンプ」程は厳しくないのかなと。

移籍の理由がアンケート結果なのだとしたら、アンケート結果が関わって来なさそうな増刊号への移籍は作品にとっては好都合なんじゃないかなと思ったのです。
アンケが悪いという理由で打ち切られる事が無さそうなので。

毎週読めていた物が、数か月おきになるというファンにとっては最大のデメリットがあり、そこを納得出来るのであれば。
編集部の方で回数の制限なく続けてくれる意志さえあれば、今回の移籍はそうそう悲観しなくても良いのかもしれません。

終わりに

今回この「SOUL CATCHER(S)」の移籍って、今までとはニュアンスが異なりますよね。
本誌から増刊号への移籍連載だと、今まで「武装錬金」や「ぬらりひょんの孫」等がありました。
直近では「べるぜバブ」もそう。

共通してるのは「番外編」または「完結篇」の連載だったこと。
「BASTARD!!」だけは違いますが、あの作品は…まあ…。全然別な理由でしょうから…。

しかし、今回は「本編」の「完結篇では無い(と思うんですが…)」作品の連載。
この移籍が成功すれば…。
アンケ至上主義に泣かされてきた作品の新しい生きる道にも成り得るかもしれませんね。
まあ、贅沢を言えばせめて月刊誌への移籍であって欲しいですけれどね。

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