「累々戦記」を読んで連載第2話って難しいんだなと思った話

この記事は

「累々戦記」の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

絵が上手いと、それだけで「読んでみよう」となる。
雨宮ケント先生の新連載「累々戦記」がそれです。

少年漫画としての格好良さ、派手さをしっかりと持ちつつ、一目で「上手い」と感じる画力。
多少ストーリーに難があったとしても、ついつい追ってしまう魅力を感じました。

そんな期待の新連載の第1話。
オーソドックスな出だしだったかなというのが、僕の感想。

世界観の説明、主人公のバックボーンのチラ見せや師匠キャラの顔見せ。
親友キャラとの出会いから今後の方向性の示唆まで。
「累々戦記」とはこういう漫画ですという教科書的な内容をぎゅっと詰め込んだお話でした。

1話ラストで高校で「剥がし屋」という「自主活動」を始めることとなった主人公・涅森と風紀委員の朝風。
暫くは1話完結で「剥がし屋」活動を描いていくのかなと想像を掻き立てる引きだったのです。
その想像は当たらずも遠からずなのか、少なくとも第2話は1話完結のエピソードとなりました。

が…。

「第2話」について思ったことをつらつらと書いていきます。

いきなり長編シリーズは怖いのかもしれない

バトル漫画といえば、やはり1つのエピソードが長編シリーズ化するのが定番です。
どうしてもスケール感を出すには、1話とか2話程度の短編ではページ数が圧倒的に足りませんから。
特に週刊誌連載ともなれば、場合によっては年単位での展開も珍しくありません。

ただ、長編シリーズってある程度の人気が出てからではないと始めにくい気がしています。
素人考えですけれど、長編は「途中から入りづらい」ので、新規読者を獲得しにくいだろうなと。
読者を獲得して人気を盤石としたい新連載では、割と致命的な「長編シリーズの短所」だと思うのです。

となると、開始後暫くは1~2話の短編が中心になってくるのは必然と言えるのかもしれません。
「累々戦記」も暫くの間短編が続くと予想されます。

さて、短編になると際立つ要素が「構成力」ではないでしょうか。
40~60ページ程度の第1話に比べ、「ジャンプ」では2話は大体25ページ前後になります。
ストーリー漫画の通常ページ数が19ページ程度、読切漫画が30~40ページ程度ですので、ちょうど中間くらいのページ数ですね。
長いわけではなく、かといって、通常よりかは少しだけ長い。
微妙なページ数の中で、どうお話の起承転結を描くか。
作家の腕の見せ所というと大げさでしょうか。

前置きが長くなりましたが、「累々戦記」の第2話25ページ。
構成力に難ありと感じた次第。

25ページでは足りない

先ずは、第2話で描かれたポイントをおさらいしておきます。

1つ目。「剥がし屋」最初のミッションを描く。
高校を主戦場として暫くは「剥がし屋」の活動に専念すると思われます。
1話の表紙に出てきたヒロインっぽい子が出てくるまでは、少なくとも続きそう。
その第一歩を描くことが最大のポイントのはず。

2つ目。朝風のバトル時のポジション確立
日常シーンのツッコミポジションに収まりつつある朝風。
良き相棒として彼を活かすには、「素人」の彼にバトル時にも見せ場・活躍の場が必要になってきます。
だから遅かれ早かれ扱われる題材だったはずです。
それをこの2回目に早くも投入してきました。

それぞれ尺不足が否めなかったのです。

「剥がし屋」活動における致命的な「設定の穴」

どこからともなく現れる敵との戦いとは異なり、今作の敵・累は「出自をしっかりと描くこと」が肝要になってきます。
そもそもが短編エピソードに向かない設定なんですよね。

人間誰しもが持っている負の感情やら悩み。
人の心の闇が形を成した存在が累。

だから、人を描く必要性があるんです。

主人公がただ悪い奴を斃すだけでは無い。
読者が共感しちゃう、そういうことあるよな~と思う心の闇を主人公が晴らす人間ドラマ。
手段こそ戦闘だけれど、本質は人の悩みを解決する物語。

故に読者が共感できるほどしっかりと人を描く必要性があるんです。
物語のもう1人の主人公。それが累であり、累を生み出す人間である。

第2話の「主人公」は演劇部部長の渡瀬先輩。
TVドラマに出演するプロの俳優としても活躍する校内一の人気者。
気になることはつい口に出しちゃうけれど、悪気は全くない素直な性格。
「期待に応えられるものが演劇しかないから、失望されることを恐れている」
これが彼の闇。

表層的な感情は理解できる。
けれど、なぜそうまでして「期待に応えられないことを恐れていたのかが分からない」。
何かしらあったはずなのです。
恐れを抱く原初となる出来事が。理由が。感情が。
大事な点が欠落しているから、今一歩渡瀬という主人公の顔が見えないんです。

ページ数が足りなかったと感じた点。

もう1つ理解出来なかったところがあります。
むしろこっちの方が問題かな。
「殻に閉じ籠もっている累」って何?
異糸とはどう違うの?
何故実体化させる必要があったの?
説明が一切無かった。

基本的には、累となる前段階、つまりは、異糸の段階で巻き取って解決させることを目指しているはず。
それをしなかったのは何故なのか。

想像は出来ます。
心に闇を持つのを第一段階としたら、異糸となるのが第二段階。
この段階で涅森たちは対処できるようになる。
そして、異糸の状態から闇を深くしたのが累。これが最終段階。
ここからが想像。
何らかの理由(どういう理由なのか想像すら出来ないけど、条件分岐があるはず)で累が表に出ない状態と出る状態に分かれる。
この表に出ない状態を「殻に閉じこもっている」と呼んでいると思われる。
既に累となっているから、異糸の時のような解決法は採れず、かといって、殻の中の累をどうこうも出来ない。
故に殻から出してやる必要がある…。

こんな感じなのかなと想像は出来るけれど、ここはきちんとした説明が事前に欲しかった。

独り言おばば

累と戦うたびに学校を壊してたら、流石にねぇ。
昔「週刊少年サンデー」で連載していた「結界師」のように、事後処理(修復や現場回復)をしてくれる部隊を出すとか、なんらかの手段が必要になる。

今作では、その役割が朝風に与えられたようです。
風紀委員の彼にはピッタリな役割ですね。

そこでキーアイテムとなったのが迷異家。
メッチャ重要なアイテムなのに説明シーンの入れ方が雑w

唐突にオババが誰かとたまたま迷異家について話しているシーンが挿入される。
苦肉の策だったのだろうなぁと穿って見てしまう。

「弱者」なら誰でも使えるのか?
朝風が「体質」を持つから使えたのか?

些細かもだけれど、大事な点です。
ここは押さえておいて欲しかったな。

終わりに

世界観の設定的に短編には不向きなんだと思うのです。
だからこそ、1話完結ではなく、前後編形式を基本線にして欲しいかな。

絵が綺麗なだけに期待しています。

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