「逃げ上手の若君」で諏訪頼重の顔を何故光らせたのか考えた

この記事は

「逃げ上手の若君」の感想です。
ネタバレあります。

頼重は顔が光るよ

「魔人探偵脳噛ネウロ」、「暗殺教室」。
異彩を放つ作品を連発してきた松井優征先生が5年ぶりに「週刊少年ジャンプ」に帰ってきました。
今度はまさかの歴史もの。

架空の人物の創作した戦国物語ではなく、実在の人物の実話を中心に据えた漫画。
「ジャンプ」としては、非常に珍しいジャンルです。
過去には「花の慶次 -雲のかなたに-」、「影武者徳川家康」(これは創作の割合が強すぎるか?)くらいしか思いつかない。

勿論歴史書では無いから、漫画ならではのエッセンスを取り入れたり、少年誌らしい脚色をしてくるのでしょうが、それにしても「まさか」でしたね。
いくらアレンジを加えるとはいえ、「ジャンプ漫画」として成立させるには歴史ものは難しいと思うのですよね。
改めて松井先生の才能に驚かされることになるのかもしれません。

とはいえ、学の無い僕。
主人公の「北条時行、誰それ?」ってなりました。
実はフィクションの人物なのではないかと疑った僕は、速攻でググってました。
この時深夜の2時。
wikipediaのページを見つけ、実在の人物だと知り、そこを読み込んで、色々してたら午前4時。
週頭から何をしてるんだという感じでしたが、wikipediaって読み始めたら止まらないから仕方ないよね。

そんなこんなで1つ勉強となりましたが、ここでふと思ったのですよ。
彼を助けた諏訪頼重。
同名の戦国武将の方が有名のようですが、それとは別の人物のこちらも実在の人物。
時行を庇護し、彼に父のように慕われた武将。
そんな頼重は、実に松井ワールドらしいキャラクターをしていました。

顔が光ってる。
こういうの「ネウロ」でいっぱい見た。

本人曰く「持って生まれた神聖さゆえ どうしても神力がダダ漏れに」なって後光が射してるのだとか。
調光機能も装備した変人なのですが、これは単純なキャラ付けと見做してもよいのでしょうか。
いいかもしれない。
むしろ深く考え込む方がどうかしてる。
けど、けどさ、とんでもない方向から伏線を張ってくる松井作品のことだから、これも単なるキャラ付けとするよりかは「顔が光ってなければならない意図」があるのではなかいと考えちゃいました。

ということで、ここから先は史実踏まえた上での考察です。
今作は繰り返すようですが、史実を基にした作品である為、作品のネタバレとなり得ます。
了承の上お読みいただければと思います。

中先代の乱の顔剥ぎ事件

北条時行の人生を読んでいて、最も「少年漫画の主人公のように鮮烈」と感じたのが、1335年(建武2年)7月に起こった「中先代の乱」です。
作中でも頼重が示唆していますね。
「2年後、10歳の時に天を揺るがす英雄になる」って。

知ったかぶって赤っ恥を書きたくないので詳細は省きますが、尊氏に奪われた鎌倉を一時的に奪還したという出来事です。

事実は祭り上げられただけなのでしょうけれど、それでも齢十の幼子が、鎌倉幕府第14代執権・北条高時と室町幕府初代将軍・足利尊氏の間の覇者と呼ばれるに至った大きな事件。
この漫画の最初のクライマックスとして描かれることが予想できます。

このように成し遂げたこと自体も大きいのですが、「漫画的」に面白いのが、ここから逃げ延びたという事実。
しかも相手(尊氏方)に「死んだ」と思わせてからの後年の「再登場」は、劇的です。
こういうのを「事実は小説よりも奇なり」と言うのでしょう。

そんな奇跡の復活劇を生んだ「事件」が、勝長寿院での自刃。

簡単に言えば、鎌倉を奪ったものの、本気を出した尊氏に追い詰められ、もうこれまでと時行側の主だった武将が自害してしまった事件ですね。
43人もの人間が、寺の中で命を絶ったようですが、この中には頼重も含まれていたようです。
事実だけを並べてみると、戦国時代によくある事件の1つに思われますが、奇異なのが「全員顔の皮が剝がされていた」点です。
想像するだに恐ろしい。
何故そんな猟奇的なことになってしまったのか。
どうも「時行が自害したと見せかけて、彼を逃がすため」だとか。
顔の判別が出来なければ、誰の遺体なのかは分かりません。
当時はDNA検査も出来ないし、歯医者のレントゲン写真と歯形から個人を特定…なんてことも出来ません。
他によほど特徴的なモノでも無い限りは、死んだように見せかけることも不可能では無かったからこその手段。

僕はここに高時の顔を光らせた理由があると考えました。

少しばかり事実を脚色してくるんじゃないかなと。
1つ大きな疑問があり、それが「43人全員の顔が剥がされていて、43人全員が自刃していた」中で「誰が43人の顔を剥いだのか」。

まさか自分の顔の皮を剥いだ後に腹を切った訳ではあるまいに。
そんな痛すぎる死に方辛すぎるわ。
まぁ、1人が42人の死体から顔の皮を剥いだ後に、自分の皮を剥いでから自害したとするのがスマートなのかもですが、それよりかは「44人目」が居たと考える方が合理的でしょう。
「44人目」=「時行」。
時行は生きて逃げ延びたに違いない。

尊氏は頭のキレも良さそうなので、こんな風に考えてもおかしくないし、だとすると計画的に破綻しています。
本気で死んだと思わせるには、44人目の存在を疑わせずに、かつ、自然と顔を剥いで死体をごまかす必要がある。

そこで、頼重です。

あれだけ顔が光っているのです。
写真など無い時代で、人の面相が知れにくい世でも、誰しもが一目で覚えてしまうことでしょう。
広く顔の知れている男・頼重。

彼の「普通に自刃した死体」が、顔の無い遺体を抱くようにして見つかれば、それは自ずと時行の遺体と思わせられるのではないでしょうか。
筋書きとしては、頼重は42人の仲間の遺体から顔の皮を剥ぎ、最後に自害した。
これならば、44人目の存在が疑われずに、誰が顔の皮を剥いだのかも自明。
1人誰しもが知る人物が死んでいて、それが時行の最も近しい人物、かつ、時行と似た体躯の子の遺体を抱いていれば、「時行の死」は確定する。
その為の光る顔。

ただ1つ問題があるとすれば、顔の皮を剥ぐという凶行を行う動機が無いこと。
尊氏側とすれば、気が狂ってる「意味のない行動」ですからね。
そこに「本意」を隠す偽の動機が必要になります。

大丈夫です。
そこもばっちし考えてあります。

光る顔。
光る顔と言えば、フェイスフラッシュ。
フェイスフラッシュと言えばキン肉マン。
キン肉マンの息子は万太郎。
万太郎と言えば。

御面頂戴

諏訪頼重の正体は、悪行超人だったんだね。

終わりに

いつ「トートトト」って笑い出すか楽しみにしたいと思います。

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