「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 Another side story 三島柚葉」感想

この記事は

「ひげひろ」スプンオフ第1弾の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

「ひげひろ」のスピンオフが始まりました。
あとがきにあったように、本編は徹頭徹尾「吉田と沙優の物語」でした。
魅力的なキャラクターを多数配置していたにも関わらず、彼らの物語は、主人公2人の物語に必要な部分しか掬い上げられていなくて、「あのキャラの気持ちはどうなったの?」と歯がゆくもありました。

今回、そんな部分にしっかりとスポットを当ててくださるということで、期待していたシリーズ。
(「シリーズ」なのかどうかは、さっきまで知らなかったわけですが)
トップバッターは、僕が大好きな柚葉ということで、俄然楽しみだったわけです。

感想です。

感想

分かってはいても辛いものがある。
最初から負けヒロインとして柚葉が描かれていたのだけれど、こうしてはっきりと振られるところを描かれるとクルものがありますね。

本編5巻のラストを読んでも、吉田との恋が成就したとは取れなかったけれど、それでも明言が無かった故に、微かな望みを抱いてはいたんですけれどね。
それでも、終わりがないと始まりも無いのは確かで。
何が一番残酷かというと、期待だけ抱かせてずるずると気持ちを持たせ続けること。

そう考えれば、いっぱい傷ついて涙して、それを読まされた身としては辛い気持ちは残ったものの、ラストに「始まりの鐘の音」が聞こえたところで救われたのも確か。

複雑なもので「吉田以外の男と付き合ってるところ」は見たくないのだけれど、次の恋に向けて前を向いたような締めは苦味がありつつも爽やかな余韻がありました。

分かりやすい「明るいだけの結末」にしないのは、本当に今作らしい締め方だったなと。

2度目のキス

男目線の、しかも、非モテの気持ち悪い意見として受け取ってもらいたいのですけれど、2度目のキスは良かったよね。

1度目のキスで終わってたら、本当に最悪だったもの。

1度目は、柚葉自身の為のキスではなくて、吉田を傷つける為のキス。
翻っては、その自覚のある彼女自身をも傷つけた「意味のないキス」だったと思っています。
想いを分からせるためにするという名分はあったけれど、行為自体に絶対の必要性は無くて。
敢えてのキスという行動に移したのは、好意からでは無いよね。

だから、これで終わってたら、最悪柚葉にとって将来的にキスに抵抗感を覚えることになったかもしれなくて。
彼女にとって思い出したくない記憶の、最も心に傷を残した行為に違いないから。
理論的な柚葉にとっては、そうだったに違いないと勝手に確信しています。

故に、2度目のキスは、嫌な記憶を上書きする相手と「愛の証」としてのキスが必要だった。
もちろん吉田側に愛の概念が無いので、「愛の証」なんて言えないのだろうけれど。
それでも、柚葉自身が心を込めて愛の代償行為をしたことに意味があるのだと思うよ。

恋を終わらせる為の儀式であり、次の恋を始める為の儀式でもあったのかなと。

終わりに

短いですが、以上です。
柚葉、可愛かったなぁ。報われてほしかった。

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