「ONE PIECE」 66巻 魚人島編総括〜魚人族の過去と現在と未来〜

この記事は

「ONE PIECE」66巻で魚人島編は完結しましたので、シリーズを振り返った考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

2つの物語で彩られたシリーズ

この魚人島編って、過去と現在。
2つの物語がこのシリーズのテーマに密接に関わってくる構成でした。
だったと思うのですね。

その魚人島編のテーマというのが「差別」だったのかなと。
この「差別」というものを3組計6人の人物を使って描いていたと考えます。

始まりの対比

魚人族と人間の長くも暗い差別の歴史。
その”始まり”こそ描かれはしませんでしたが、この両種族間の大きな対立の構図は「過去の物語」で語られました。
オトヒメ王妃とフィッシャー・タイガーですね。
これが「始まりの対比」であると僕は勝手に決めつけましたw

この2人。
考えの底の部分は、全く以て同じでした。
未来の魚人族の事を考え、人間との蟠りを説いて明るい未来を望んでいた。
信念こそ同じであった2人でしたが、その最期が異なっていました。

タイガーは人間の”裏切り”に合い、人間を恨んだまま息を引き取りました。
ただし、その憎悪を次世代に残したくはないと言い遺してではありましたが、それを聞いたアーロンらにはこの願いは届きませんでした。
彼はせめて人間に対する憎悪を一人で背負いこんで逝こうとしたのに、その想いは通じず…。
悲しい事に次世代に憎悪を引き継がせてしまう事となったのですよね。

一方の王妃。
こちらもまた人の凶弾に倒れました。
これはまぁ、ホーディの策謀でしたけれど、この時点ではしらほしを除く全員が「人間の仕業」であったと騙されてしまった為、敢えてこう書きます。

で、この時の王妃は、一切人間に対する恨み辛みを遺しませんでした。
これ以前に世界貴族に撃たれた時もそうでしたが、自分の感情以上に魚人族の未来を考えていたのでしょう。
きっと王妃が「母親」だったからなのでしょうね。
自分の愛する”天使たち”を守りたいが故で、そこがタイガーには無い部分だったのかなと。

こうして、人間に対する憎しみや怒りを持たない事だけを約束させて逝ってしまいました。
残った王子達もまた、この願いを聞き入れ、必死に人間への怒りを鎮め、母の意志を継ぐことを誓っていました。

それぞれ同じ信念で動いていたタイガーとオトヒメ王妃でしたが、前者の思いは引き継がれずに、後者は引き継がれてと、全く正反対の結果に終わったのですよね。

“次世代”の対比

それから時が経って、この始まりの対比は次の世代に移行しました。
現在の物語です。

ここでの主役は、僕はフカボシ王子とホーディだと思っております。
何故そう考えているのか…。理由は単純に、見た目がそっくりだからですw

どちらもサメの魚人だからなのか、外見が本当に似ております。
目と口など、細部を見れば勿論違うのですが、パッと見だと見分けがつかない事も何度かあったくらいですw
なんでルフィがホーディの背中に乗ってるんだろう?とか。
読んでいて何度間違えたか…。
まぁ、これは僕がアホなだけだと思うのですが、それでも一度くらい見間違えた事がある方って少なくは無いんじゃないかな?

で、これは単なる邪推なのですが、ホーディの見た目を変えたのは、この見間違えをわざと誘発する為だったんじゃないかなと。

元々黒髪だったホーディは、E・Sの濫用で白黒の漫画本編上では、真っ白な髪へと変化しました。
フカボシも元々髪がホワイトで描かれていましたので、余計に両者が似てしまった…。
なんとなく深読みしちゃうんですよね。

それはさておき…。
この2人は、それぞれオトヒメ王妃とタイガーの「落とし子」です。
人間への憎悪を封印した王子と、剥き出しの悪意を放ち続けるホーディ。

この2人は、今回の戦いを経て交わります。変な意味ではありません。
そこで王子は気づくのですよね。
自分達の過ちに。
母の真意に。

人間への憎悪を封印する事なんて決して出来ない。
封じたり忘れたり出来ないならば、全て消し去ってしまうしかない。
そして願った。「ゼロにしてくれ!!!」と。

勿論願ったところで、そんな事簡単には出来ないです。
人の感情をゼロにする事なんて無茶ですよね。
長い年月を経て熟成されたものですから余計に。

でも、そんな困難な事を形として描こうとされていたのだと思います。
憎悪の塊であるホーディを討ち倒す事で。

ホーディに動機を与えず、ただただ人間への憎悪の塊として描いた意義が、これだったのでしょうね。

2つの種族の未来

ホーディは破れ、だからと言って魚人族の人間に対する憎しみが消えたわけではありません。
先にも書きましたが、そんな簡単な事では無いですしね。

ただ、一つの歴史的な歩み寄りは描かれていました。

魚人であるジンベエから人間であるルフィへの輸血です。
これがどれだけ大きい事なのか。
振り返ってみても明らかですよね。

先ずは過去。
輸血さえ受ければ助かった命も、人間の血を入れたくないからという理由で拒み、命を落としたタイガーの件。

現在に於いては、サンジがその役目を担っておりました。
一見ギャグっぽく描かれたサンジの鼻血大出血は、結構重要だったんですよねw
この時は、結局は魚人からの輸血を拒まれ、同じ人間からの献血で難を逃れました。

そして未来。
古い”法律”が魚人族の王の許可の元破られ、ここから未来が始まる予感が伝わってきました。

第648話 “タイヨウへと続く道”。
このお話の直後のカットです。

2人の始まりの思いが結実した瞬間を表したような、素晴らしいページですね。

まとめ

ポセイドンの事やデッケンの登場など、メインテーマと思しきものの他に色々と肉付けされていたシリーズでしたが、全体を読み直してみると実にストレートなメッセージが込められていたと思います。

僕の解釈が正しいのかなんて分かりません。
まぁ間違っている可能性が高いでしょうけれども、それでもシリーズを改めて振り返ってみるのもまた面白いのかもですね。

ONE PIECE 66 (ジャンプコミックス)

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